本研究の目的は第1に、階層などの客観的諸条件とは相対的に独立した潜在的文化集団(=ミリュー)が、ライフスタイルを中心とする主観的諸条件によって形成されるとの前提にもとづき、現代日本における若年層の分化を適切にとらえうるミリュー・モデルを構築することであり、第2に、そのモデルを政治行動分析に適用し、若年層の政治的亀裂について明解な説明図式を提示することであった。 本年度は、昨年度実施した東京調査のデータを用いて、上記の目的にそった分析を行った。その主要な成果として、若者におけるポピュリズムの支持基盤についての報告・論文がある。若年層において社会的属性はポピュリズムに対する支持一不支持を規定するものではなく、むしろ「ミリュー」によってこそよりよく説明されることが明らかとなった。具体的には「物質的」目標や「自分らしさ」を重視するミリューがポピュリズムに対しより肯定的であること、活動性の低さが特徴的なミリューにおいて不寛容・排外的な態度が顕著であること、いわゆる「オタク」的なミリューは逆にもっとも反ポピュリズム的であることなどが示された。 このように、若年層の多様性を主観的諸条件からとらえなおすことで既存の研究が十分に明らかにしえなかった複雑な関連の一端を描き出した点に本研究の意義がみとめられよう。また、本研究で提示したミリュー・モデルは若者研究の新たな方向性を指し示すものであり、今後とも継続的に調査・分析を行っていきたい。
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