研究概要 |
本研究は,留学を契機として来日する中国人のアイデンティティや日本社会への統合についての考察を通して,日本社会および国際関係の変容を展望するものである。 日本に滞在する中国人は増加の一途をたどり,韓国・朝鮮人につぐ大規模な外国人人口をなしている。また中国人の移民プロセスの特徴は,留学・留学から日本企業や研究機関等への就職という長期滞在パターンが成立している点で,他のニューカマー外国人にはみられない,日本の高等教育,社会,経済と深いつながりを持つ集団を形成している。近年では日本国籍や永住資格を持つ中国人も急増する一方で,常に帰国が意識され強いナショナル・アイデンティティを保持している点に申請者は以前より注目してきた。 本研究では,(1)「国際移民システム」仮説の精緻化,(2)「永続的ソジョナー中国人」の日本的特質および社会的統合に焦点を絞り,中国人によるトランスナショナルな移民システムの展開とそのインパクトを明確にした。とくに日本永住資格を取得するニューカマー中国人が急増しており,日本政府としても従来のオールドカマー在日韓国・朝鮮人や在日華僑をメンバーとしていた「永住者モデル」を変更しなくてはならない段階に達している。 こうした成果により横浜市財団法人横浜学術教育振興財団の研究論文刊行費助成を受け,単著『「永続的ソジョナー」中国人のアイデンティティ』として発表した。
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