本年度は2度の国内調査を行い、関連する資料・文献の収集を行った。 2009度当初の4月においては、川崎市の在日外国人を象とした地域福祉を実践する「川崎市ふれあい館」を訪問し館長ならびに職員の方々からお話をうかがった。1988年に開設された「川崎市ふれあい館」は社会福祉法人青丘会が行政からの委託を受けて管理運営を行っており、地域福祉の拠点として多彩な市民活動が行われている。開設以前の準備段階から現在までの来歴を概観すると、まさに草の根の市民運動によって設置に至ったことがわかる。調査当日、同法人の設立母体である桜本保育園横で開催されていた在日コリアン高齢者交流倶楽部「トラヂの会」の野遊会に参加させていただき、参加者ならびに職員・ボランティアの方々からお話をうかがった。また、「川崎市ふれあい館」が所蔵する図書・視聴覚資料等は逐次データベース化が進められており、特に関東地域における在日コリアンの生活問題にかかわる一大情報拠点となりつつあることが確認された。 関西地域における在日コリアン集住地区である大阪市生野区に位置する「聖公会生野センター」を訪問した際には、在日コリアン高齢者への昼食提供等を行う「のりばん」に参加させていただいた。行われている「のりばん」には近隣から徒歩で、または自転車や歩行補助荷車で参加者が集まってく数年間使用した以前の小さな民家から、2008年3月に移転した地域福祉の新しい拠点である。週二回行われている「のりばん」には近隣から徒歩で、または自転車や歩行補助荷車で参加者が集まってくる。多くの在日コリアン対象の福祉サービスがそうであるように、参加者の大部分が女性である。ニューカマーの在日コリアンであるアルバイトの調理スタッフと、在日二世や教会関係者等、多様な背景をもつボランティアによってされている。済州島出身者がい「のりばん」参加者の好みを尊重した郷土料理が昼食として供され、韓国のホームドラマを視聴しながらお茶と会話を楽しむ、ふだん着のサービスが行われている。「のりばん」代表者の方からは、地域福祉にかかわる多数の事業についてお話を伺うとともに、書籍・資料をいただいた。「のりばん」開設まで至った経緯をみることで、ここ10年の関西地方における在日コリアン福祉に関わるパーソナル・ネットワークと福祉実践の広がりについて具体的に明らかにすることができた。
|