本研究は、労働市場において配分されている労働過程に関わる社会的資源に着目し、その分布と配分メカニズムを明らかにすることによって、雇用の女性化や非正規化が、男性や正社員も含めた被雇用者全体にいかなる影響を与えるかを、解明しようとするものである。平成19年度は主に「社会的関係を内包する労働市場のもとでの地位達成」に関する理論レビュー、理論構築、さらに既存の大量調査データ分析を行った。大量調査データの分析にあたっては、お茶の水女子大学COEプログラム「ジェンダー研究のフロンティア」の労働組合調査プロジェクトデータを主に用いた。 研究成果については、2007年8月14日から8月17日までMcGill University(カナダ)で開催される国際学会INTERNATIONAL SOCIOLOGICAL ASSOCIATION RESEARCH COMMITTEE ON SOCIAL STRATIFICATION AND MOBILITY (RC28)に参加し、Effects of Workplace Composition on Annual Wage of the Standard Employees in Japanというタイトルで、お茶の水女子大学COEプログラム「ジェンダー研究のフロンティア」の労働組合調査プロジェクトデータの分析結果の一部について、報告を行った。この研究により、同じ職場に女性が多いことは男性正社員の賃金を高めるが同じ仕事をしている女性が多いことは男性正社員の賃金を低めること、女性正社員の場合、同じ職場に非正社員が多いことにより賃金が下がるとはいえないことが明らかになった。これらの研究を通じて、職場における雇用形態と性別に関する分析枠組みを、理論的・実証的にとりまとめることができた。これらの成果を平成20年度の企業調査に生かし、さらに研究をすすめてゆく予定である。
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