本研究は3カ年の計画であり、本年度は3年目にあたる。昨年度までに引き続き、本年度も都市住民のネットワーク、犯罪不安、地域防犯活動に関する内外の文献(図書、論文、報告書等)ならびに新聞記事データベースによる資料、防犯パンフレット等の各種資料を収集・整理した。都市住民の日常生活において、犯罪不安は生活の質の阻害や行動制約をもたらしうる重要な問題である。本年度はとくに犯罪不安を中心に検討し、地域防犯活動ならびに個人のリスク回避行動との関わりを検討した。この検討のもとにしたのは、2009年の1月から2月にかけて郵送法で実施した、20歳から69歳までの成人を対象とする住民調査(n=1082)である。研究結果から、以下の2点が明らかになった。 第一に、従来、社会思想研究の立場からの議論が想定していたのとは異なり、地域での犯罪問題の共同解決に期待する程度を示す集合的効力感は、犯罪不安ではなく、パーソナルネットワークおよびソーシャルサポートなどの紐帯や地域活動参加によって規定されることが明らかになった。一方、人々の犯罪不安は、大人による自分自身や家族のためのリスク回避行動に結びつく可能性が示唆された。これらの研究成果を、日本都市社会学会および日本犯罪社会学会において報告した。 s
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