児童虐待への対応において適切で迅速な解決を得るためには、関連する様々な職種間の連携が必須である。しかし、現実には、組織間の壁や職種間での認識の差異などにより、必ずしも十分な連携がとれていないのが現状である。また、職種間連携の視点からの研究もほとんどなされていない。そこで本研究では、スムーズな多職種間連携を妨げる一つの要因は、各職種同士の間に生じる「認識のズレ」にあると仮定し、この様相を明らかにすることを目的とする。本年度はこの目的に向けて、(1)児童虐待に関係する各職種の情報収集・処理(リスク認知)の特性を知る、(2)各職種のリスク認知に影響する要因を知る、といった2点の目的のもと、児童虐待に関わる様々な職種の被験者に対して「児童虐待事例のリスク認知評価調査」と「フェースシート」から成るアンケート調査を実施した。全国の児童虐待に関わる多職種に対する研修を行う施設である『子どもの虹情報研修センター(日本虐待・思春期問題情報研修センター)』において、平成19年10月より、ここに集まる各種専門職員に調査を実施中であるが、現在までに、児童相談所の児童福祉司47名、児童心理司12名、そして児童養護施設・乳児院の児童指導員31名、保育士30名、家庭支援専門相談員14名、情緒障害児短期治療施設の専門職員6名、またその他(児童相談所医師、医療機関の医師、児童養護施設・乳児院の看護師、一般保育園・幼稚園の保育士など)32名から回答が得られ(合計172名)、回収率は全体で42.0%である。現在は回収したデータを随時入力中である。そして今年度は前述施設において、医療機関関係者、地方自治体福祉担当事務職、児童虐待に関心がある一般大学生に対する研修の開催が予定されており、更にこれらの対象が被験者として加わる予定である。
|