研究概要 |
本研究の主たる目的は,「不定住的貧困」の地方部における出現形態や大都市部と比較した場合のその特徴,さらには地方で「ホームレス」であることの福祉課題としての意味を明らかにすることである。こうした目的に照らし,研究計画としてH19年度は文献・資料研究と外国における動向のサーベイ,さらに年度後半には,北東北圏域における予備調査の実施をあげていた。しかし,東北をフィールドの中心としつつ,地方部における特徴を明らかにするためにも,大都市をはじめ,地理的な比較対象をまずは拡がりをもって設定してみることの意義を確認しつつ,今年度はとくに全国的な問題状況の把握を試みた。 H19年度は,地方における「ホームレス問題」の対象化,すなわち,ホームレス問題の地域性や地方ならではの問題の発現の仕方を明らかにする作業の第1段階として,全国1840の自治体を対象にした悉皆調査「ホームレス生活者への福祉対応に関する調査」を主として実施した(郵送により実施。有効回収率56.3%)。調査では,法外援護などの具体的支援内容だけでなく,ホームレス生活をしている人々に対する行政対応の担い手の意識についても質問を行なった。 その結果,ホームレス状態の要因として行政担当職員の意識として全国的にみて最も高いのが,「本人の自立心の欠如」であり,次いで「自立可能な仕事の欠如」となっていた。この傾向は変わらないものの東北地方では,上記の回答が,とくに「自立心の欠如」において若干高く,またそれゆえに「まずは住居を確保」という問題解決の方途を選択した人も全国で見た場合よりも若干低めであった。こうした事など,地方における問題発現の差異を実態的に示す基礎データを,本年度は入手することが,まずはできたといえる。こうした基礎データをどのように解釈するのか,次年度以降の研究課題として展開していく予定である。
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