本研究は、いわゆる「ホームレス」という不定住的貧困の存在形態に関わり、地方部、とりわけ農漁村地区における人々の生活と不定住的貧困との関係に焦点をあて、わが国の「地方部における不定住的貧困(=ルーラル・ホームレス)」の具体像を明らかにし、実のある支援システムを構築するための地方部における独自なニーズを発掘し、今日における貧困実態の具体的な把握に貢献することを目的としている。 上記研究目的に照らし、平成20年度は、主として中山間地における住民の居住実態に関する調査及び、青森市における野宿生活経験のある人の居宅生活状態に関する実態調査の2つを柱として研究を進めた。第1の調査では、岩手県内の一つの自治体で、高齢者を中心にどのような居住生活を送っているのか、またアメニティや設備といった点で住宅がどのような状況にあるのかを調査した。本調査を通じて、居住面に即してみた場合の生活様式における、都市部と地方部の差異の存在を明らかにした。上記調査を踏まえ、平成20年秋には社会政策学会にて「岩手県I町における貧困の特徴」というタイトルで報告を行い、貧困の地域的な意味の検討をおこなった。 第2の青森調査では、かつて野宿生活を経験したものの、現在は生活保護を受給し居宅生活を送っている人々15名の生活実態について半構造化面接法による聞き取りを平成21年3月後半に行い、現在引き続き分析を続けており、今年度継続する追加調査と併せて、地方においてホームレス生活という貧困状態で生活することの今日的な意味の解明に資する素材の収集をおこなった。
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