前年度までの文献調査と事例調査から得られた視点をもとに、聞き取り調査と分析を行い、文献研究にてさらに考察を行った。 障害者地域自立支援協議会は、制度化された政策ネットワークととらえることができるが、そのネットワークの参加資格に関しては自治体ごとに多様性がある。政令指定都市に限ってみても、区ごとに協議会を設置しているところもあれば、広域レベル、あるいは全市レベルでのみしか設置していないところがある。さらに同じ政令市の中でも、区ごとに参加アクターにばらつきがあるところもある。 このようなネットワークのアクターを制度的に規定するのは、自治体官僚による組織デザインによるところも大きいが、相談支援事業所などの民間アクターのそれまでの力量形成の内実からも影響を受けている。そしてこの民間アクターの力量は、単なるアクターの選定によるものではなく、経常的なネットワーク組織の運営にも影響を与えており、例えばネットワークの中核となる事務局機能へのコミットの強弱によって、このネットワークの政策アウトプットへの影響力も異なることが推察された。区あるいは圏域レベルおよび市全体という2層の構造になっている政令市においては、民間アクターと区の官僚がネットワークのガバナンスを担うが、全市レベルの官僚および民間アクターの代表も、各区の「ガバナンス」の状況を見極めながら「ガバナンス」を行う、メタ・ガバナンスの役割を果たす重要な主体となっていた。 今後はこのような構造の中でのガバナンス、メタ・ガバナンスの効果の実証と、方法論について検討していきたい。
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