今年度は、リスク評価尺度の評価対象及び構成概念ならびに評価項目を設定するための基礎研究として、障害福祉サービスにおいて生じる典型的なリスク事象及びその対応の基本モデルを把握することを目的としたインタビュー調査を実施した。具体的な方法として、先駆的な障害福祉サービスを展開する地域及び組織の実践者7名に対して個別のインタビュー調査を実施した。調査により集積した質的データは、QDAソフトを活用し、内容分析及び記述分析を実施した。その結果、リスク事象の典型について、日中活動系のサービスと居宅系のサービスでは明らかな差が見られること、利用者の生活機能及び支援者の支援機能ならびにサービスの構造との関連で把握する必要があること、さらには、リスクを軽減、増大させる環境因子の評価が不可欠であることを捉えた。 以上の研究成果を踏まえて、リスク評価尺度の対象を精神障害者が主に利用するグループホームに対象を焦点化した上で、昨年度の研究で抽出されたリスク項目のうちグループホームに係る10項目、国際生活機能分類 (ICF) の概念を援用したグループホーム利用者の生活機能に係る40項目、環境因子に係る30項目からなるリスク評価尺度試案を作成した。 なお、評価尺度試案の信頼性、妥当性の検証については、来年度に予定しているグループホームのサービス管理責任者を対象とした質問紙調査並びにフィールドテストによって検証していきたい。そのために現在、質問紙調査を実施するためのプレテストを実施しているところである。
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