本研究は、貧困にある子どもとその家族に対するインタビューを中心にした調査により、子どもの貧困・不平等の今日的状況を構造的に明らかにすることを目的としている。今年度は、子どもの貧困研究のレビューと子どもへのインタビュー調査を中心に研究を進める予定であった。文献レビューについては、国内外のソーシャルワーク・教育社会学・社会政策などにおける、貧困が子どもに与える影響・貧困の世代的再生産の研究・国際比較研究などを扱った文献・資料を収集して行った。その結果、多くの研究が、貧困が子どもに悪影響をもたらしてしまう事実を示してはいるものの、貧困の世代的再生産プロセスにおける道筋・メカニズムはほとんどわかっておらず、これを明らかにするためには家族の状況を考慮したうえで、特に子どもの意識(アスピレーション)を深くとらえる必要があることが課題として示唆された。以上については、「先進国における子どもの貧困研究-国際比較研究と貧困の世代的再生産をとらえる試み」(『子どもの貧困』所収)に反映されている。 こうした課題を意識しつつインタビュー調査も行う計画であったが、被調査者の選定や依頼に困難が生じたため、数件の予備調査的なもの、そして以前からの継続調査にとどまった。その中で、経済的な意味での貧困(低所得)のみならず、家族の文化的・社会関係的な資源が、子どものライフチャンスとって重要であることが改めて課題として提起された。これについては、「子どもの貧困とライフチャンスの不平等-構造的メカニズムの解明のために」(『貧困と学力』所収)に-部盛り込んである。以上を踏まえて、次年度で子どもとその親への調査を本格的に実施する予定である。
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