日本における「子どもの貧困」を現代的な相対的貧困として捉え、問題の構造を解明することを試みた。親の経済的・文化的・社会的資源の不平等が、子どもの学力・教育達成に影響を与えることは先行研究より明らかになっていたが、家族資源の不平等は子どもの日常的な生活そのものの分化をもたらしていること(ライフスタイルの不平等)へより注目する必要性があることが明らかになった。また、貧困のもとで育った子どもたち(中高生)は、そのライフコースにおいて、乳幼児期の段階から長期的で深刻な貧困の中におかれていることが示唆された。保育士へのインタビューからは、たとえば、貧困にある幼児においては、休日における体験の乏しさ、衣食住にわたる生活資源の不足(食事がコンビニの弁当、夕食をおかしで代用、毎日同じ衣服、乱雑な部屋など)、文化的環境の未整備(家に絵本がない、読み聞かせをしない)など、乳幼児期からの生活物資と生活体験の剥奪が確認された。今回は部分的な質的調査によっていくつかの事実を確認するにとどまったが、今後は量的調査によるデータの検討を通して、「子どもの貧困」の具体的な姿を明らかにしていく必要があることが示唆された。
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