本研究は、児童福祉領域における、親、児童相談所、家庭裁判所等の専門機関から独立した子どもの利益代理の必要性を明らかにした上、子どもの利益代理にあたっての基本原理および子どもの利益を代理するための具体的な制度保障のあり方等、子どもの利益代理制度創設のための基礎的条件を解明することを目的としている。本年度は、子どもの利益代理制度について、比較法制度調査を行なった。イングランドは、虐待などの理由で子どもを親から分離する等、福祉的な理由で子どもを保護する裁判手続において、子どもの利益を代理するための「子どもの後見人」制度を有している。この制度が導入されたきっかけとなったのは、ケア命令により地方当局に保護されていた子どもが、命令が解除され、自宅に戻った直後に継父に殺害された事件があり、子どもの利益が親と独立して代理されていれば、このような被害は避けられたと判断されたことである。2000年の刑事司法および裁判所サービス法により、子どもの後見人は、組織的にも独立性を強化され、独立行政法人として、子どもおよび家庭裁判所助言および支援サービス(The Children and Family Court Advisory and Support Service通称CAFCASS)が創設された。子どもの後見人は、通常、CAFCASSに所属するソーシャルワーカーが任命されるが、独立性を担保するために、現在及び過去5年間に、地方当局の被用者であった者や当該子どものケアを提供する施設等の従事者であった者、当該子どもの保護観察宮であった者は、任命できない。以上の点から、子どもの利益代理に際しては、組織的および担当者の職務権限の観点から、独立性が担保されていることが明らかになった。
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