本研究は、認知症高齢者をかかえた家族を支援する技法としてナラティヴ・アプローチに着目し、その有効性の射程を理論的、実証的に検証するとともに、ソーシャルワークの観点から実践理論としての体系化を目指すものである。 平成19年度は、主として(1)認知症ケア、家族介護、ソーシャルワーク、ナラティヴ・アプローチ、社会構成主義、ストレングス、セルフヘルプ・グループ、質的調査法などに関する国内外の文献レビュー、(2)地域包括支援センター社会福祉士(非常勤)という立場からのナラティヴ・アプローチを用いたソーシャルワーク実践とデータ収集、(3)認知症介護家族によるセルフヘルプ・グループへの参与観察を実施した。 研究成果として、ソーシャルワークにおける「理論と実践の乖離」克服の方向性を、ポストモダン的対人援助技法としてのナラティヴ・アプローチに求めて、その専門性、固有性が理論的に整理された。また、わが国のソーシャルワーク実践において、認知症介護家族への支援におけるナラティヴ・アプローチの一定の有効性が検証された。 これらの研究成果は、「地域包括支援センターにおけるナラティブ・アプローチを用いたソーシャルワークの実践」 (第15回日本社会福祉士学会大会、平成19年6月)、「ソーシャルワークの専門性とナラティブ・アプローチ」(第24回日本社会福祉実践理論学会大会、平成19年6月)、「ナラティブ・アプローチのソーシャルワークにおける/としての固有性」(第55回日本社会福祉学会大会、平成19年9月)として学会発表した。
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