本研究は、認知症高齢者をかかえた家族を支援する技法としてナラティヴ・アプローチに着目し、その有効性の射程を理論的、実証的に検証するとともに、ソーシャルワークの観点から実践理論としての体系化を目指すものである。 平成20年度は、平成19年度の研究成果をふまえ、主として(1)ソーシャルワーク、ナラティヴ・アプローチ、拒否的/消極的利用者、ケアマネジメント、セルフヘルプ・グループ、質的調査法などに関する国内外の文献レビュー、(2) 地域包括支援センター社会福祉士(非常勤)という立場からのナラティヴ・アプローチを用いたソーシャルワーク実践の分析、(3) 認知症介護家族によるセルフヘルプ・グループへの参与観察調査(委託)を実施した。 具体的には、(1) ソーシャルワークにおけるナラティヴ・アプローチの特長をケアマネジメントとの対比から検討した。(2) ソーシャルワークにおけるナラティヴ・アプローチの実践理論として妥当性の理論的精緻化を図った。(3) 認知症介護家族によるセルフヘルプ・グループへの参与観察を通して、ミーティングの場における司会者・世話人のファシリテーターとしての役割を分析した。これらの分析をとおして、ナラティヴ・アプローチの有効性と限界を明らかにした。 平成20年度の研究成果の一部は、「拒否的/消極的利用者への支援-ソーシャルワークにおけるナラティヴ・アプローチによる介入」(日本生命倫理学会第20回年次大会、平成20年11月)として学会発表した。
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