本研究は、(1)ソーシャルワーク発達史におけるエスニシティに対する価値、理論、実践の変遷、(2)ソーシャルワーク教育における教授法や教材等の現状、(3)日本における外国籍住民支援団体の実践、を明らかにし、最終的には多文化社会に対応可能なソーシャルワーク教育方法及び教育内容の開発を目的としている。 3年間にわたる研究の初年度として本年度は次の作業を行った。(1)ethnicity、mu1ticultura1、anti-oppressiveの視点で書かれたソーシャルワーク専門図書をレビューし、多民族・多文化化に対する価値や理論の変遷、教授法を整理した。(2)社会福祉援助技術論、社会福祉援助技術演習等に関する日本の文献をレビューし、外国籍住民等に関する記載内容や頻度、教授法を整理・分析した。(3)日本及び全米ソーシャルワーカー協会が採択している倫理綱領や実践のための基準に関する文書を確認し、エスニシティや外国籍住民等に関する項目や内容を整埋した。 以上を踏まえ次の点が明らかになった。(1)エスニックマイノリティを限定的に取り上げるのではなく、障害者や高齢者、移民など社会的排除や差別を受けている人々も含めて、anti-oppressive practiceなど幅広い枠組みで価値・理論・実践を構築している。(2)ソーシャルワーク教育協議会(CSWE)が「教育方針と認定基準」に反差別や多様性を組み入れているように、カリキュラムや教育内容の構築並びに水準の維持に認定基準は不可欠である。(3)教授法及びカリキュラムの開発にあたっては、心理学や教育学における多文化に関する先行研究や実践が活用可能である。(4)NASWの「ソーシャルワーク実践における文化的専門能力の基準」のように、学習の理解度や達成度を評価したり教育の達成目標を明確したりするための指標としてコンピテンスを開発する必要がある。
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