本研究は、在日コリアン高齢者を対象としたデイサービス活動を展開する福祉NPO、中でもそれら活動への参加主体をとりあげる。活動への参加者の位置取り(ポジショナリティ)に着目し、参加者が民族的マイノリティとしての在日コリアン高齢者とマジョリティとしての日本社会成員との間で中間者としての意味を構築する過程について分析することで、社会の変容や新たな価値創出の可能性について考察しようとするものである。平成20年度は、平成19年度に行った先行研究の検討および仮説の設定の補足と、ヒアリング調査を行った。 1 先行研究の検討の補足 平成19年度の福祉国家および福祉社会とマイノリティとの関係、社会的排除と解決方策に関する文献のレビューに加えて、平成20年度は、地域福祉分野における関連文献のレビューおよびキーワードの抽出と概念整理を行い、理論的進展をはかった。 2 ヒアリング調査 在日コリアン高齢者を対象としたデイサービス活動を展開する福祉NPOの活動参加者へのヒアリング調査を実施した。調査対象は、スタッフのほとんどが在日コリアンニ・三世である団体の活動参加者と、約半数が日本人である団体の活動参加者で、在日コリアンニ・三世と日本人の両方が含まれている。 ヒアリングの内容は、活動の動機や内容、位置取り(ポジショナリティ)に関する意識と変容、社会との関係などである。 平成21年度は、(1)ヒアリング調査の結果の分析、(2)補足資料の収集と補足調査、(3)研究のまとめと公開(学会発表、論文執筆)を行う。
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