本研究では、在日コリアン高齢者を対象としたデイサービス活動を展開する福祉NPO、中でもそれら活動への参加主体をとりあげた。活動への参加者の位置取り(ポジショナリティ)に着目し、参加者が民族的マイノリティとしての在日コリアン高齢者とマジョリティとしての日本社会成員との間で中間者としての意味を構築する過程について分析することで、社会の変容や新たな価値創出の可能性について考察した。 これら福祉NPOの活動が在日コリアン高齢者の歴史的経験・文化的特性に配慮したものであることなどから、活動への参加者は在日コリアンニ・三世を望む団体が多い一方で、一部の団体では、参加者に日本人が約半数を占めるところもあった。在日コリアンニ・三世の参加者は、利用者(在日コリアン高齢者)との関わりを通して、自身のルーツを再確認するとともにマイノリティとしての当事者意識が高まる傾向にあった。一方で、日本人参加者は、利用者および在日コリアンニ・三世の参加者との関わりを通して、日本社会におけるマジョリティとしての自らの位置を相対化し、再定位しようとする傾向がみられた。 本研究の意義として、(1)福祉社会形成の要因を複眼的に考察することに貢献できる、(2)福祉社会形成に対する福祉NPOのアプローチ法を見出すことが期待できる、(3)社会の変容や社会福祉における新たな価値の創出の可能性について考察することに貢献できる、(4)活動への参加者という要因の有用性を検討することにより、社会の変容や社会福祉における価値の創出の手法のひとつとして、新たなアプローチ法を見出すことが期待できる、の4点があげられる。
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