本研究は、障害者自立支援法(以下、法)施行により従来の精神障害者社会復帰施設が新施設・事業体系へ移行することに伴い、改めて福祉工場の機能と役割及び精神保健福祉士(以下、PSW)の存在意義と福祉的課題を明確にすることを目的としている。初年度は、2006年に行った福祉工場の基礎的な調査結果を踏まえ、全国の福祉工場を対象に法施行後の活動状況を中心に質問紙調査を実施した(有効回収率44.4%)。今回の調査は法施行前と後を比較検討し、福祉工場の活動状況の課題と就労支援施策の現状把握を行った。その結果、新体系へ移行した施設は全体の37.5%に過ぎず、施行以前から懸念事項としてあげられていた利用者負担(利用料1割負担)が、就労継続支援A型への移行が想定される福祉工場にとって大きな障壁となっていた。加えて、2008年度の法改正の内容によって移行するかどうか検討している傾向が見られた。また施行以前の研究において福祉工場とは、就労支援と生活支援の2つの役割が補完しあい、精神障害者が社会の中で生活していけるという「生活者」としての自信と責任感及び経済的な自立を確保することであると整理した。そしてPSWの存在意義は、安心して働ける人間関係の中で、精神障害者が本来持っている力を最大限に生かすことにあると示唆した。法施行後おいても、福祉工場の果たす役割は今迄と同様であるが、利用者は就労収入が減少することにより他の福祉サービスの利用を調整する状況があった。またPSWや他の専門職は、事務量の増加や事業所運営に労力が割かれた為、障害特性に応じたかかわりや柔軟な個別支援(ソーシャルワーク)が展開できなくなっていることが明らかとなった。
|