初年度は、2006年に行った福祉工場の基礎的な調査結果を踏まえ、全国の福祉工場を対象に障害者自立支援法(以下、法)施行後の活動状況を中心に質問紙調査を実施し、法施行前と後を比較検討し、福祉工場の活動状況の課題と就労支援施策の現状把握を行った。2年目の本年度は、昨年度の調査を基礎とした。近年、障害者の自立に対する社会の考え方が「働くこと」に偏ってきていることに鑑み、障害者の就労と自立を考える上で、従業員と職員及び関係者との関係性のあり方を再点検する必要があることから、これらの課題を聞き取り調査より明らかにすることを試みた。法施行後おいても、福祉工場の果たす役割は今迄と同様で、「生活支援」と「就労支援」の2つの役割が補完しあい、精神障害者が社会の中で生活していけるという「生活者」としての自信と責任感及び経済的な自立を確保ずることある。しかし現実的には、成果主義という枠組みの中で行わなければならない「生活支援」と「就労支援」という現状が見られ、本法の就労支援観に疑問を持っ結果となった。また福祉工場ではクリーニング業を主としているところが多い為、昨今の原油高騰の影響を受け、燃料費等のランニングコストの節約などで経営的にも厳しい環境に置かれている現状があった。PSWとして本来しなければならないことは、障害特性に応じたかかわりや柔歓な個別支援(ソーシャルワーク)の展開であるが、昨年度の調査同様、事務量の増加や事業所運営に労力が割かれた為に非常に難しい状況であった。しかしそのような中でも、既存の就労支援に当てはめるのではなく、精神障害者の持っている障害特性や地域社会との関係性に配慮しながら、彼らが働きやすい環境づくりや条件を提案していこうとする姿勢が見られた。
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