昨年度は、知的障害のある人の生活において、どのような自己決定活動内容、自己決定活動に関連する能力、そして自己決定活動に関連する環境要因があるのかについて文献(主に洋文献)調査により明らかにした。それらをもとに、大阪知的障害者福祉協会に加盟している知的障害者入所更生・授産施設57箇所、通勤寮3箇所、そしてグループホーム・ケアホーム238箇所を対象とした質問紙調査を実施した。本質問紙調査では、知的障害のある人がどの範囲でかつどの程度自己決定活動に取り組んでいるのか、どの程度自己決定に関連する知識やスキルといった能力を持っているのか、そしてどの程度支援環境が整っているのかについて明らかにすることを目的とした。調査方法は、郵送調査とし、調査期間は、2007年の9月1日〜9月30日までであり、有効回答数は693票で、回収率は71.7%であった。 現在上記調査の結果をもとに統計分析を行っている。まず自己決定活動の構造を因子分析により明らかにし、それらの各因子においての平均値比較を行った。その結果、日常生活における比較的平易な自己決定活動ついては、取り組んでいる利用者が多い一方、医療行為を受ける際の決定に関しては他者に決定を委ねている傾向があることがわかった。また、利用者の年齢および障害程度区分については、ほとんどの因子で相関がある一方で、相関関係があると予想された在所年数においては、関係を示した項目は少なかった。また、自己決定活動各因子を従属変数と設定し、施設の規模、そして統制変数として性別、年齢、障害程度区分、在所年数を独立変数とした重回帰分析を行った。その結果、施設の規模がすべての自己決定活動因子に関連を示しており、施設規模が大きくなるほど、自己決定活動の程度が低くなることが明らかとなっている。今後、本調査データをさらに分析し、知的障害のある人の自己決定支援の方法を提案したい。
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