平成19年度は、研究実施計画に基づき(1)イギリスのコミュニティケア実践についてのヒアリング、(2)日本国内の先進地域ケア実践の把握による研究を行った。 (1)イギリスのコミュニティケア実践については、以下のヒアリングを実施し現状把握を行った。(1)近年のイギリスにおける小地域活動の取り組みとして始められたA Sure Start for Older Peopleプロジェクトのパイロット事業(Link-Age Plus)を実施しているTbwer Hamlet区内の3つの事業所を訪問し、ヒアリング調査を実施した。各事業所には、小地域エリアを担当するアウトリーチワーカーと事業運営に携わるコーディネーターが配置されている。アウトリーチワーカーの職務は、担当地域へ出向き高齢者へのアセスメントを実施し、ニーズを発見しサービスへつなげることである。地域内で果たすアウトリーチワーカーの存在は、地域活動を展開していくうえで大きな役割を果たしているということである。(2)地方都市のYork市のボランティア組織において高齢者の地域支援の取り組みに関するヒアリングを行った。イギリスの地方都市でも核家族化が進み、近くに家族がいない、友人や訪問する人がいない等、高齢者の孤独・孤立の深刻化や単身生活が不安定化しやすい現状にあるとの説明を受けた。孤独や孤立の問題に対し、ボランティアによる友愛活動「be friending事業」に取り組んでいること、そのなかで、訪問したボランティアが高齢者の情報が組織のコーディネーターに集約され、本人に必要なサービスへつなぐ取り組みが行われていた。 (2)自治体や社会福祉協議会と協働し、在宅高齢者の小地域ケアネット実践活動を行っている岐阜県瑞穂市内および愛知県名古屋市内の団体を訪問し、問題発見プロセスやケアネット形成プロセス、ケアネット維持のための取り組み等についてヒアリングを行った。実践活動を担う地域団体と自治体や社会福祉協議会の協働のあり方が、活動の展開には重要であるとの共通点がみられた。
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