本研究の目的は、障害者雇用支援センターにおける知的障害を持つ利用者への労働環境の支援、および生活環境の支援、ならびに「主体性および社会性に関する評価(以下主体-社会性評価という)」による支援という三層の支援のあり方について明らかにすることである。 平成19年度は、I県内の障害者雇用支援センターにおいて作成が試みられている「主体-社会性評価」の有効性について検討した。「主体-社会性評価」は、当事者とその支援者である指導員や家族などが共有できる、当事者の一般就労の定着を志向した有効な判断材料づくりを目的とし、「身辺自立」「意志交換」「集団参加」「自己統制」「対人関係能力」「認知能力」といった6領域で構成されている。これらの6領域を得点化したものを、「主体-社会性スコア」とした。 そこで平成16年4月から18年9月に当該センターを利用後、一般就労した就職者を対象とし分析を行った。その結果、「主体-社会性スコア」は、1)職場への定着指導の状況において、指導のペースが「規定を超えた」者よりも「規定の範囲内」の者の方が高く、2)「離職中」よりも「就労中」の者の方が高いことが明らかになった。 以上のことから、「主体-社会性評価」を用いて、当事者の就労実態を予測し、就労の開始する時期や支援のポイントを検討することが有効である可能性が示唆された。 次年度は、これらの成果を学会誌に投稿するとともに、利用者の労働環境、生活環境、「主体-社会性評価」という視点から、個別支援プログラムの作成と、引き続き利用者の評価方法について検討する。
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