NPO団体におけるスキル継承に関わる実態と問題を明らかにすることを目的として、初年度に実施したNPO団体代表者への面接調査の結果に加え、学生団体への面接調査の結果についても分析し、これらの結果について2件の学会発表を行った。 分析の結果、地域貢献を集団の目的として強調しているNPO団体だけでなく、学生のサークル団体も技術・技能を地域から求められ、地域へ活動の場を広げていることが伺われた。NPO団体と学生団体のいずれも、中心的人物の呼びかけに応えて結成されていた団体が多く、メンバーや外部のニーズに応えて目的が多様化し、活動内容が複雑化しており、所属メンバーには後付けで役割が当てはめられていた。 退職者などが中心となって結成されたNPO団体では、リーダー交代が必要な時期に来ている団体が多く見られたが、設立時のリーダーは自身の引退や交代に関しては念頭にない場合が多く、交代の具体的なルールや継承内容については未検討の団体が大半であった。一方で学生団体では、発足からの経過年数にかかわらず交代方法が明確に決定されていた。この背景として、加入時から脱退時期が予測されている学生団体では、結成当初から役割の交代とスキルの継承とを念頭においたルール整備を行っていることが考えられる。学生団体と同様にNPO団体においても、初期から交代に関するルール整備を並行して行っていくことが、集団継続において肝要と考えられる。 これらの研究成果の一般性については、最終年度に定量的な調査を行う必要性が残されているが、スキル継承を円滑に行うための、集団目的・状況に合わせたチェックリストと対策リストをホームページ上で公開するという最終目的のための基礎的な知見であり、現場で活用できる情報を実社会に還元するための基盤となる。
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