実験経済学で用いられる経済ゲームでの行動の個人差を双生児データを収集し、遺伝と環境の影響を検討する。さらにゲームでの行動データを、既存の性格特性、社会的態度、認知能力データと掛け合わせて分析することにより、パーソナリティーから社会行動にいたる遺伝環境構造を明らかにすることを目的とした。 統計分析に必要となる多量の双生児データを収集するためにWebサイトを用いて、戦略型の公共財ゲーム実験を、2009年11月から2010年2月にかけて実施した。3600名の双生児に郵送にてWeb実験への参加を求め、282名からの協力を得た。実験参加者はインターネットを通じてWebサイトにアクセスし実験に参加した(通信はSSLによって保護された)。参加者には光実際のゲームの結果に応じた謝金が銀行振込により支払われた。 参加者が実験室を訪問する形で行われた先行研究の結果と合わせると、実験状況におけるさまざまな相違点にもかかわらず、個々人の回答パターンのばらつき方については、ほぼ同様の結果が得られた。一方で、双生児きょうだいの回答相関を見たところ、実験室実験においては、他者の協力度が高い状況での回答において遺伝の影響が見られたのに対し、Web実験においては遺伝の影響よりも家族の共有環境の影響の方が大きいことが示唆された。このことは1)双生児が全く同じ環境で回答した実験室実験で、むしろ遺伝の影響が強く表れたこと、および2)心理指標にかかわる双生児研究では希にしか観察されない共有環境の影響が観察された点で、興味深いものと言える。
|