研究概要 |
昨年度は,申請した3年間の追跡研究の初年度にあたり,対象家庭への質問紙調査とインテンシブ・グループの作成および対人ネットワーク日誌の実施に従事した。母親と父親がともに回答したのは450家庭(母親641名,父親450名)であり,そのうちインテンシブ・グループとして登録されたのは50家庭であった。 対象家庭の内訳は,核家族が393家庭(92.3%),拡大家族が33家庭(7.7%)であり,核家族がほとんどであった。対象児のきょうだい数は一人っ子が最も多く(61.1%),2人きょうだいが31.1%,きょうだいが2人以上いる子どもが34名(7.8%)存在した。また,0歳時点で保育所などの託児施設に預けられている対象児は49名(11.2%)であった。 こうした家族形態,きょうだい数,託児施設の利用有無といった対象児の対人ネットワーク環境を示す要因や,親が子どもに抱く信頼感が,0歳時点における子どもの他者に対する親和的傾向とどう関連するかを検討した。子どもの他者に対する親和的傾向の指標には,子どものパーソナリティを測定する尺度のうち「人と一緒にいるのが好きだ」,「一人で遊ぶよりも人といっしょに遊ぶのが好きだ」,「他の何よりも人間に興味を示す」の3項目の合計得点を用いた。家族形態(核家族か拡大家族か),きょうだいの有無,託児施設の利用有無,親が子どもに抱く信頼感の高低(平均得点を基準に二分化)のそれぞれを独立変数とするt検定の結果,親の信頼感が高い群の子どもの方が,低群の子どもに比べて他者への親和的傾向が高いことが示唆された(t=-3.85,p<01)。 このように,0歳時点の横断的な検討からは,Social NetworkモデルよりもAttachment-basedEpigeneticモデルの方が,子どもの後の仲間関係のあり方に影響する他者との関わりやすさの発達をより説明するモデルであることが示唆された。
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