研究概要 |
本研究の目的は,対人ストレッサーの基本類型,生起頻度,インパクトなどの文化差を明らかにすることである。本年度は,日本における対人ストレッサー類型(橋本,1997;2005a;2005b)の文化的普遍性/独自性について検討するための,先行研究レビューとパイロット研究を実施することを中心的課題とした。 1.ミシガン大学の北山研究室の協力により実施されたパイロット研究,日米学生の対人ストレッサーに関する自由記述データについて分析を実施した。その結果,日米ともに対人ストレッサーの種類は概ね類似していること,しかしその背景要因に文化差があることが示唆されており,文化心理学における先行研究の知見と照らし合わせながら,この研究は来年度に学会発表を行う予定である。また,併せて実施された援助要請傾向の文化差に関する研究から,日本では援助要請が対人ストレスを喚起しうることが示唆され,この点も継続して検討していく予定である。 2.名古屋大学の高井研究室の協力を得て,日米での対人ストレッサー,およびその規定因(ソーシャルスキル等)に関する質問紙調査を開始した。ここから対人ストレッサーの文化差を,数量的により明瞭に明示することが想定されている。日本における調査は既に終了し,来年度はアメリカでの調査・分析を実施する予定である。 3.対人ストレッサーの文化差の説明要因を明らかにするために,先行研究のレビューも重点的に実施した。その結果,個人主義/集団主義,相互独立的自己観/相互協調的自己観といった当初想定の要因に加え,分析的/包括的思考,および愛着スタイルも,対人ストレスの文化差を規定する重要な要因である可能性が推測され,それらの可能性を検討するための前段階となるパイロット調査も実施し,現在その結果を解析中である。
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