研究概要 |
本研究の目的は, 対人ストレッサーの基本類型, 生起頻度, インパクトなどの文化差を明らかにすることである。そこで本年度は大まかに2つの課題に取り組んだ。ひとつは, 昨年までに実施された複数の予備的調査に関する結果について学会発表を行い, そこでの議論を通じて, 現段階での問題点を抽出しながら, 今後の研究の方向性について指針を定めることであった。そのための具体的活動として, ミシガン大学北山研究室の協力により実施された日米の対人ストレッサーに関する自由記述の分析結果を, 2009年2月にアメリカで開催されたSPSPの年次大会で発表した。また, 昨年度の先行研究レビューで対人ストレスとの関連可能性が示唆された, 愛着スタイル, 文化的自己観, 分析的-包括的思考に関する調査研究の成果について, 国内の諸学会で発表した。 もうひとつの課題は, 本研究の主目的である対人ストレスの文化差を比較検討するための, 本調査データの収集である。日本におけるデータ収集は, 名古屋大学教育発達科学研究科高井研究室の協力によりすでに昨年実施されており, 本年度は研究協力者とともに, その分析に取り組んだ。それと同時に, アメリカでのデータ収集を, カリフォルニア大学サンタバーバラ校とニューメキシコ大学, 両校のコミュニケーション学部の協力を得て実施した。当地での調査実施に了承を得るための手続き, および十分な人数の調査協力者を集めるためのプロセス・コストが当初の想定以上にかかり, それにともない研究の進展状況も遅滞気味であるが, 何とか本年度中にデータ収集が終了する見通しである。さらに幸いなことに, カリフォルニア大学サンタバーバラ校心理学部文化心理学研究室の協力も新たに得ることができ, 上記とは別個のデータセットによる日米比較調査も実施された。こちらも本年度内にデータ収集が完了して, これからその分析に入る段階にある。
|