心身の健康状態を促進すると報告されている自己開示行動が、心的外傷(トラウマ)からの回復やストレスの緩和にとって有効にはたらく条件を明らかにすることを目的として、大学生を対象とした2つの質問紙調査を実施し(第一調査は2007年7月実施、第二調査は2008年1〜2月実施)、災害救援者を対象とした面接調査に着手した(2008年2月調査依頼開始)。 大学生に対する質問紙調査では、両調査ともに、回答者の8割が非常に衝撃的でつらい体験を有しており(第一調査N=144、第二調査N=220)、衝撃的体験保有者のうち、9割弱が衝撃的体験に関する自己開示を行っていた。自己開示を行った者に関して、8割近くから、「自己開示をしてよかったと思った経験」が回答されたが、自己開示直後の感情や認知は、ポジティブな内容だけでなく、ネガティブな内容も多くみられた。また、自己開示後の感情や認知の状態は、衝撃的体験の内容や自己開示をした相手からの反応の他に、自己開示の仕方(開示時期、頻度、人数など)によって異なっていた。 災害救援者に対する調査は、衝撃的な現場活動後のストレスケアにおける自己開示の活用方法の探索を目的としており、最終的には自己開示を取り入れた災害救援者に対するストレスケア技法の提案をめざすものである。本年度着手した面接調査では、協力者に対する説明合意を得た上で、衝撃的な体験後に行った自己開示行動あるいは抑制行動の経験の詳細や、それらの行動に伴う心身の状態の変化について半構造化形式で尋ねている。現在までに消防職員2名に対して実施しており、次年度に、面接協力者の募集を行いつつ、調査実施の承諾を得ている消防職員5名に順次面接を行う予定である。
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