研究課題
本研究では、社会的情報処理と情動制御の2側面から反社会的行動が生起する二重内的過程を包括的にモデル化し、その発達的変化と適応的な方向での様態を明確化したうえで、内的過程に影響を与える要因を近接的要因(友人、家族、学校など)と遠隔的要因(社会環境や社会システム)の両面から同定することを目的とする。本年度は、1. 社会的情報処理と社会的自己制御が反社会的行動を生起させる内的過程の検証、2. 親の養育態度としつけが社会的情報処理と自己制御に及ぼす影響の検討、3. 社会化要因を媒介した反社会的行動規定モデルの国際比較を実施した。1. では、社会的情報処理と社会的自己制御による反社会的行動の予測性を比較する分析を行った結果、前者の予測力が高いことが示された。したがって、構造方定期モデリングを用いた因果関係の分析を行ったところ、社会的情報処理が社会的自己制御を規定することで反社会的行動に影響を及ぼすという、社会的自己制御による媒介モデルの存在が示唆された。2. では、統制的な養育態度が社会的情報処理の適応性を高める一方、応答的な養育態度は社会的自己制御における持続的対処や根気を高めることが確認された。しつけに関しては、社会的場面で良いおこないを褒めるしつけを行うことが、適切な自己主張能力を高めることが見出された。3. では、集合的有能感と共同体暴力経験からなる社会環境の特徴が、個人の社会化の良好さを反映する社会的情報処理と情動制御の指標を媒介することで、反社会的行動に影響を及ぼすモデルの国際比較を行った。日本、韓国、中国、米国の4か国の比較から、一貫して社会的情報処理を媒介するモデルが支持されることが明らかとなった。
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