研究概要 |
本研究課題は,1.コンドーム購入時および使用時/使用交渉時に発生する羞恥感情の下位情緒を特定し,2.そこでの羞恥感情の発生因を明らかにし,3.羞恥感情およびその発生因がコンドーム購入および使用/使用交渉行動を抑制する程度を明らかにし,4.コンドーム購入および使用時の羞恥感情の発生を抑制するための有効な教育プログラムを開発することを目的としていた。 平成21年度にはまず,コンドーム購入時における羞恥感情抑制プログラムの開発を行った。平成20年度までの研究成果を踏まえ,購入時の様子を記録したVTRを用いたコンドーム購入トレーニングプログラムを作成した。大学・大学院生30名を対象に,無作為2群事前事後測定計画によってプログラムの効果を検討した結果,トレーニングはコンドーム購入時の羞恥感情の抑制に有効であることが示された。さらにコンドーム購入に対する自己効力感および購入行動意図の有意な増加も明らかとなった。 一方,コンドーム使用・使用交渉行動に関しては,倫理的に問題のない直接の介入プログラムの作成は困難であった。平成20年度までの研究において,コンドーム使用・使用交渉時の羞恥感情は,男性の場合はパートナーからの評価を気にすることによって,一方女性はふるまい方がわからなくなることによって生じることが示されてきた。そこで18~25歳までの男女256名を対象に,パートナーからの評価が気になったり,ふるまい方がわからなくなったりする理由を尋ねる調査を行った。その結果"愛情提示の失敗懸念","使用・提案方法の不明瞭さ","使用拒否懸念","雰囲気崩壊の懸念"といったカテゴリが得られた。中でも"相手を愛していないと思われるのではないか"といった"愛情提示の失敗懸念"が強く影響していることが示唆された。そこで今後は,性交渉の相手との信頼関係を重視した介入プログラムの開発を検討していくべきであろう。
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