昨年度までの研究では、ルームメイトや夫婦といった相互作用頻度の高い関係に注目し、それぞれの関係内での責任判断の食い違いが外部ネットワーク(以下、SN)の共通性によって規定されることを示した。本年度はこれらの知見では十分に精緻化されていなかった点に焦点をあて検証を行った。 その第一は、SN共通性と独自性それぞれの効果の独立性の検討である。これまではそれらを背反関係にあると想定してきたが、論理的にも実証的にもそれらは独立していると想定でき、それらの機能もまた独立している可能性を指摘した。そこで、ルームメイト関係でのパネル調査データを分析したところ、独自SNサイズは自己志向的な対処行動を、共通SNサイズは他者志向的な対処行動を独立して促進することが確認できた。 本年度検討した第二の点は、親密関係の相互作用過程を調整するSN共通性の効果の検討である。かけがえのなさを基盤とする関係ではその特別視する傾向が必要に応じた相手への非協調的行動を抑制する。しかしSN共通性の低さはこの影響過程を調整する可能性がある。そこで中年夫婦を対象とする調査データに基づき検証した。結果は、DVなどの否定的相互作用を生起させたりエスカレートさせたりしない上で、SN共通性の低さが効果をもつことを示唆し、本研究の社会的意義を示した。 以上の結果について、関連する国内・国外の学会にて発表した。その一部は、平成21年、日本グループ・ダイナミックス学会第56回大会優秀学会発表賞を受けた。
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