研究概要 |
本研究は、現在の我が国において犯罪捜査においてしばしば虚偽検出検査とも呼ばれているポリグラフ検査を補う新しい検査として、空間注意課題の利用可能性を探ることを目的としている。実際のポリグラフ検査は、事件に関わったものにしか知りえない犯罪内容に関する被検査者の記憶の有無を調べることを目的として実施され、ある事件について犯人しか知り得ない犯罪内容に関する裁決質問と、裁決情報と同じカテゴリーに属するが当該事件とは直接関係しない非裁決質問を呈示し、それぞれの質問に対する生理反応の変化を基に、犯罪内容を知っているかどうかを判定する。本研究では被検査者にとって有意な刺激である裁決情報には、注意がより向けられやすくなるという仮説の下に、視覚定位課題を用いた検査の可能性について検討することで、時間的・経済的コストにすぐれ、かつ従来の方法では調べられなかった事項についても適用可能性を持つ新たな検査方法の開発を目指す。前年度は、視覚定位課題(Posner, 1980)を用い、裁決・非裁決の違いが空間注意に影響を与えるのかどうかを確認する研究を行った。その結果、裁決情報を空間注意の誘導手がかりとして提示した場合には、手がかり提示位置に出現した標的への反応が遅延する復帰抑制が大きくなるという結果が得られた。この結果を受けて、比較データを得るためと先行知見の確認を目的として、注意誘導手がかりとして情動刺激を提示する基礎実験や、視覚定位課題以外のパラダイムの利用可能性について特に潜在連合テストを用いた実験を行った。
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