本研究の課題は、自己内対話を促進する他者との対話のあり方を、ヴィゴツキー理論に基づき検討することである。そのため、幼児期の自己に向けられた発話であるプライベートスピーチを自己内対話の原初的姿として位置づけ、研究対象とする。他者との対話のあり方が自己内対話にどのように影響するかを実験的に検討する枠組みとして、観察可能な内言であるプライベートスピーチが、構造的外言・機能的内言の特徴を最大限に有する時期に、他者との協同後の単独場面におけるプライベートスピーチの観察を行う。本年度は、2年目以降の縦断的データ採取に向けた、実験・観察手続きの確立と測定変数の構成のために、予備的検討として、以下の通り先行研究で蓄積されたデータの再分析を行った。 (1)プライベートスピーチ出現の年齢的ピーク:3歳児クラスのデータと1年後のフォローデータの再分析より、4歳から4歳半にかけた増加と4歳半から5歳にかけた減少という半年単位での顕著な変化が示唆された。 (2)異なる認知課題間におけるプライベートスピーチの安定性:4歳児クラスを対象とした2種類の認知課題遂行中の発話を比較し、発話量の正の相関及び、発話の機能的類似性を確認した。これらの結果を受けて、次年度に向けた実験の詳細が検討された。また、実験者が陪席しない単独場面での認知課題の提示が可能となるように、タッチパネル画面を用いたコンピューターのプログラム作成を専門家に依頼し、試行可能になった。
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