本研究は、自己内対話を促進する他者との対話のあり方を検討することを目的とする。幼児期の自己に向けられた発話であるプライベートスピーチ(private speech)を自己内対話の原初的姿として位置づけて、研究対象とする。 自己内対話の育成に関して、以下のような観点から理論的検討を試みた。他者との対話が内在化して自己内対話となる過程の分析において、他者との対話の内在化を可能にする個体側の要因を考慮しなければならない。そこで、実行機能及び心の理解の発達に関する先行研究をもとに、昨年度のプライベートスピーチデータの分析結果とあわせて、幼児期における実行機能、シミュレーション及びプライベートスピーチの発達機序について、仮説を立てた。以上の理論的検討と、昨年度に引き続きこれまで蓄積したデータの再分析を行い、それらの結果から、次の実験を計画し実施した44〜60ヶ月児54名を対象に、複数の認知課題遂行中のプライベートスピーチの採取、言語発達検査、ワーキング・メモリ課題、心の理論課題を行った。さらに、外言及び注意の制御に関する保育者評定を行った。現在、分析を行っている。
|