(1)前年度の調査のデータ分析:他者との対話の自己への内在化を可能にする個体側の要因を検討するために、44~60ヶ月児54名を対象に実行機能課題及び誤信念課題とプライベートスピーチの関連を分析した。 (1)視覚的探索課題において試行の成功を導かない低機能なプライベートスピーチを多く示すほど誤信念課題の成績が低いこと、また、保育者評定による幼児の対話性が高いほど視覚的探索課題の成績が高いことが示された。これらの関連は、年齢や言語年齢を統制した後も有意な傾向であった。自己に向けられた言葉が、その誕生の初期から心的操作の役割を果たせるわけではないこと、また、自己に向けられた言葉が心的操作の役割を果たせるようになることが誤信念課題の成否に関係していることが示唆された。 (2)対象児を4歳、4歳半、5歳児群に分類し、群ごとに絵カード分類課題遂行中のプライベートスピーチと誤信念課題の成績の相関を検討したところ、4歳児群では発話量と誤信念課題に正の、5歳児群では負の相関が示された。自分に向けられた思考の道具としての言葉の発達の個人差と、社会的認知能力の個人差の関連が示唆された。 (2)縦断データの採取:前年度調査と同じ対象に対して、(1)プライベートスピーチの測定、誤信念課題、言語媒介性の測定、(2)協同的問題解決場面の観察と、2回調査を行った。他者との協同が自己内対話を促進するか、及び、促進する場合の個体側の発達的条件について検討するために、現在、データのコーディングと分析を行っている。
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