通常の学級に在籍する発達障害のある子どもへの支援体制の確立は急務である。適切な支援には適切な評価が必要であり、学校現場で利用できるような、簡便で実用的かつ有用な情報を提供しうるアセスメントツールの開発が求められている。筆者は、長く臨床現場で活用され、実施が簡便で、学校学習において不可欠な言語能力領域を測定することのできる改訂版絵画語い検査(PVT-R)に着目した。PVT-Rの改訂(再標準化)作業の遅れに伴い、健常児データの分析および発達障害児のデータ収集も予定より遅れたものの、東京・埼玉・神奈川にある発達障害の相談・指導の専門機に協力を得、平成20年1月末までに通常学級に在籍する発達障害のある小学生89名のデータを収集することができた。発達障害の代表的な障害はLD、ADHD、高機能自閉症であるが、重複しやすい障害種があることや、診断上は重複しないルールだが、実態としては重複する場合もあることが知られている。今回も多くの事例において重複した状態が認められたことから、障害種別の分析を行わず、「発達障害」して分析を進めた。健常児や発達障害児データの分析からは、(1)知的障害のない発達障害児における語い理解の発達の推移は健常児と大きく変わらず、語い理解におけるアンバランスは明確に認められないこと、(2)WISC-IIIの言語性IQ、全検査IQ、言語理解との相関関係から、PVT-Rが言語や知能の一部を測定していることや、PVT-Rの結果によって全般的知能水準や言語能力全般をある程度は推定できること、(3)PVT-Rの結果が低いほど、学力のつまずきが広範囲または重くなる傾向があること等が確認された。これらの結果は、PVT-Rの特性を明らかにすると同時に、通常学級における初期アセスメントツールとして活用するときの視点にもなりえると思われる。
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