通常の学級に在籍する発達障害のある子どもへの支援体制の確立は急務であり、学校現場で利用できるような、簡便で実用的かつ有用な情報を提供しうるアセスメントツールの開発が求められている。そこで、筆者は改訂版絵画語い発達検査(PVT-R)に着目して研究を進めてきた. 平成19年度に行った発達障害のある小学生のPVT-Rと他の検査の関連や学習困難との関連などについての分析結果を踏まえ、今年度は学校現場に協力を求め、発達障害のある小学生8人への適用を行い、約半年間に渡って担任へのコンサルテーションを行った。その結果は以下の通りであった.(1)PVT-Rの結果の中でも「語い年齢」と「検査中の様子」は、担任や保護者が対象児を理解する上で役立つ。(2)PVT-Rの結果に基づいて導かれた支援策は、おおむね有効であった。(3)支援策の中でも、学級の状況や担任の考えに即したものほど実践率や実践の効果が高かった。(4)PVT-Rで対象児の理解が深まり、支援策に結びついた事例では、専門機関への受診やさらなるアセスメントに発用することが多かった。これらの結果から、PVT-Rを学校での初期アセスメントとして利用することは有用であることが示唆された。一方で、アセスメントに当たる者の専門性(発達や障害、学級経営に関する知識や経験など)によってPVT-Rの有用性が左右される可能性もあると思われた。こうした結果や考察を学会で発表し、教育・心理の専門家や学校教員から多くの意見や指摘を受けることができた. 総括として大学紀要への投稿論文や報告書を作成し、関係者に送付した。
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