研究概要 |
1)目的:中学生および大学生を対象とした実験研究を行い,自発的な特性推論(行動を観察しただけで,意図なく自発的にその人の特性を推論すること)の発達過程を検討する。 2)方法 (1)要因計画 年齢群(2;中学生・大学生)×性別(2)×試行タイプ(2;再学習・統制)×特性価(2;ポジティブ・ネガティブ)の4要因計画。年齢群と性別は被験者間要因,試行タイプと特性価は被験者内要因である。 (2)実験対象者 中学1年生74名(男38名,女36名。平均13歳10カ月),大学生64名(男12名,女52名。平均19歳)。 (3)手続き Power Pointの画面を呈示して一斉に行った。(1)接触フェイズ:顔写真と行動記述文のペアを呈示。10ペアが特性暗示文,10ペアが特性を暗示しない中立文であった。(2)遅延フェイズ1:文章と顔写真の印象評定およびアナグラム課題を実施。(3)学習フェイズ:顔写真と特性語のペアを呈示。再学習試行では(1)において特性暗示文がペアになっており,統制試行では(1)において中立文がペアになっていた。なお再学習・統制試行はそれぞれ10試行であり,いずれもポジティブ語とネガティブ語が半数ずつであった。(4)遅延フェイズ2:アナグラム課題を実施。(5)再生フェイズ:顔写真のみを呈示し、(3)でペアになっていた特性語を回答させた。 3)結果と考察:大学生と中学生のいずれも,特にネガティブ特性において自発的に特性を推論しやすいことが示された。これまでは自発的特性推論において,欧米のデータしか示されていなかったが,集団主義的な文化であり特性推論が見られにくいとされる日本人のデータにおいても自発的特性推論が見られたこと,また青年期前期の子どもにおいても見られたことより,自発的特性推論は文化によらず普遍的なプロセスであると推測される。
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