研究概要 |
<実験1> 意図せず,自発的に,他者の行動から特性を推論する「自発的特性推論(Spontaneous Trait Infbrence)」の発達に関して,実験的検討を行った。小学生にも適用できる新たな方法を探るため,再学習パラダイムを応用した方法を開発し実施した。 方法:小学5年生43名,大学生105名を対象として,集団実験を行った。まず顔写真とその人物の自己記述のペアを提示した。その後顔写真と特性語のペアを提示し,記憶するように教示した。行動記述が特性暗示文であった場合に,参加者がそこから自発的に特性を推論していれば,その後の写真と特性語のペアの学習は再学習となるため記憶しやすくなると考えられる。その後,写真と特性語のペアを提示し,先ほどのペアと同一かどうか,またその判断の確信度を判断してもらった。すなわち,昨年度行った再学習パラダイム実験(オリジナル版)では再生を指標としたが,かわりに再認と確信度評定を指標とした。 結果と考察:大学生においては,自発的特性推論はポジティブ特性暗示文に対しては生じず,ネガティブ特性暗示文に対して生起した。また5年生においては,いずれの特性価においても,自発的特性推論が生起しなかった。なぜ5年生において自発的特性推論が確認できなかったのか,再認を指標としたことが,5年生の推論プロセスにどのように影響したのかを探ることが今後の課題である。 <実験2> 幼児における自発的特性推論の形態を探るため,4~6歳の幼児52名を対象とし,他者についての特性推論の発達について個別実験により検討した。その結果,見知らぬ大人に対し,4・5歳児は性別や見かけを手がかりにして,また6歳児はコミュニケーション場面の状況を手がかりにして,自発的に特性推論を行うことが示唆された。幼児においても自発的特性推論が生じる可能性が示唆されたが,そのプロセスを抽出するパラダイムを開発することが今後の課題である。
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