研究概要 |
本研究では,発達性読み書き障害の児童について,その読みの特徴を眼球運動計測により明らかにするものである。本研究では,その際,読み書き障害児の視覚認知や音韻処理能力などについて調べるテストを実施し,眼球運動計測により明らかにされた読みの特性と,各種認知能力の低下との関係を明らかにしていく。平成19年度はそのために,読み書き障害児の認知特性を把握するためのテストバッテリーを検討した。テストの候補として,視覚認知能力(TVPS),視覚長期記憶(RCFT),眼球運動制御(DEM) ,言語長期記憶(AVLT),音韻想起(RAN) ,音韻意識の6つの能力を測定するテストを選定し,これらのテストを発達障害が疑われる児童43名に対し実施した。その結果,いずれのテストもWISC-IIIの群指数得点と強い相関を持たず,従来の知能検査とは異なる側面から児童の認知能力を測定していることが確認された。また,発達障害を伺われる児童では,視覚長期記憶,音韻意識(単語逆唱)の能力の分散が大きく,また眼球運動制御能力についてもそれが低い児童がいることを見いだした。この結果より,これらの能力を軸に読み書き障害児をグルーピングし,実際の読みの特性との関係を明らかにしていく必要があることが示された。また,平成19年度は,成人40名を対象に眼球運動計測を用いた実験を行い,計測に最適な刺激の提示方法,記録に必要な機器,設備の検討を行った。これにより読み書き障害児,および健常児に対する眼球運動記録を安定して行うことが可能となった。
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