本研究の目的は、障害児および不登校を経験した子どもとその親、彼らに対して支援を行う者の視点を通して、わが国においていま子どもが自立すること/子どもを自立させることの意味を究明することである。本研究は、(1)不登校経験者とその親・支援者にとっての自立、(2)障害をもつ子どもとその親・支援者にとっての自立、の2つのテーマからなる。 平成19年度は、それぞれのフィールドにおけるデータ収集を中心に研究を進め、次のような成果がえられた。 第1に、サポート校および通信制高校の卒業生2名とその親に対してインタビューを行った。特に、親子でインタビューを実施した1事例からは、親からみた不登校と子どもからみた不登校の違い、そしてその違いを現在まで両者がどのように捉えてきたのか、を知ることができた。通信制高校に在籍する生徒3名にもインタビューを行い、彼らにとって「おとなになること」の意味を聞き取った。 第2に、障害者にとって働くことを通した自立とはなにか、またそのためにどのようなことが必要なのかを探究するため、通所型の施設を経て就労した障害者の母親2名と、就労にあたって親子を支援した施設職員に対して、グループインタビューを実施した。その結果、以下の3つの視点-(1)自立とは、周囲の人々のあいだで支えられ、また自分自身も誰かを支えるという関係を生きることである、(2)また一方で、親がわが子の強さ・成長に気づき、手を離していこうと一歩を踏み出せることでもある、(3)就労や自立といわれるなかに、個人によってさまざまな形がありうる-をえた。
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