研究概要 |
最終年度としての今年度目的は本調査のデータ分析に基づき,育児期夫婦における家計収入管理が夫婦関係にとってもつ意味を親役割相互調整の観点から探り,育児期夫婦における「伴侶性」について検討することを目的とした。 主な結果は以下の通り。 ●家計に関する意識については,「家計の透明性」「稼ぎ手の権威」「愛情主義」「家計の統一性」など6因子が抽出され,「家計の透明性」が高いほど,また「稼ぎ手の権威」が低いほど,夫婦ともに結婚満足度が高いことが示されていた。 ●さらに,「家計の透明性」は夫婦双方の共感的コミュニケーション態度と正の関連が見られたほか,妻の「愛情主義」は夫婦の共感,依存・接近的な態度,夫の「稼ぎ手の権威」は夫から妻へのネガティヴな態度と関連し,家計に関する意識と夫婦間コミュニケーションとの関連が明らかとなった。 ●親役割観の相互調整と同様,家計収入・管理タイプに関しても夫婦間の認識は必ずしも一致しておらず,またその異同は結婚満足度とは関連していない。 ●家計管理のやり方についての満足度は妻よりも夫の方が高く,現在のやり方について変えたいと思っているのも夫よりも妻の方が高いことが示されていた。 ●夫婦間の貨幣配分のタイプの異同については,夫婦それぞれの実際と理想が一致しているかどうかが関連しており,貨幣配分タイプに関する夫婦間の相互調整は,それが夫婦関係における日常的な行動のパターンとして形成されていくのみならず,そこで自分がどのようにしたいのかという理想をも含めて夫婦間で交渉が行われることがうかがわれた。 以上より,家計の収入管理に関する夫婦間相互調整については,どの家族においても一定のタイプに収束するというよりも,夫婦サブシステム外部からの影響や,理想水準にみられるような夫婦関係そのものに対する自己評価的側面をも含み,ダイナミックに変動していくものであることが示唆された。
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