研究概要 |
本年度は, 研究の完成年度であった。本年度実施した研究内容とその成果は次のようなものである。 まず, 研究内容としては, 批判的思考の認知的構成要素の解明と教授学習プログラムの開発に関する基礎的研究を実施した。批判的思考の認知的構成要素を明らかにするために, 批判的思考態度といくつか異なる性格特定との相関関係を明らかにすることを試みた。その結果, 不確定志向性が批判的思考態度の探究心と関連が見られることが明らかとなった(藤木・沖林, 2008)。批判的思考の教授学習プログラムの開発に関する基礎的研究としては, 大学の初年次教育における心理学の専門科目における批判的思考態度の位置づけについて検討した。具体的には, 授業開始時と授業終了時に, 受講生に心理学イメージに関する調査と批判的思考態度の調査を実施した。調査の結果, 心理学について科学的なイメージを抱いているものは批判的思考態度が有意に向上していることが明らかとなった。すなわち, 学生の科学的イメージの共有が批判的思考態度の育成に重要であることが明らかとなった。 本年度は, このような研究成果をいくつかの学術論文および学会発表として報告した。学術論文としては, 日本教育工学会論文誌, 学校教育実践学研究などの学術雑誌に発表した。また, 学会発表としては, 日本教育心理学会での自主シンポジウムを開催した。また, 本研究の研究代表者が研究分担者として参画している, 本研究課題と連動して展開している科研基盤B「批判的思考の認知的基礎と教育実践」(研究代表者 : 京都大学楠見孝)の成果発表として, 大学教育研究フォーラムでのラウンドテーブルで発表した。
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