これまでの我が国におけるFDに関する議論において、相互研修型FDという理念が提出されてきたが、それを、現実の大学の現状をふまえた中で、FD組織のあり方とからめて、どのように実現してゆくか、という点がさほど検討されてこなかった。本研究では、大学教員としてのキャリア発達を援助するために必要となってくるFDについて、理念(相互研修論)、組織(FD組織論)、実践(マクロ : FDプログラム論、ミクロ : 臨床論)を一体にして検討をおこなった。検討をおこなうさいに、筆者も含めて実施してきた、新任教員対象の合宿ワークショップ型の「FD基礎プログラム」、大学授業コンサルテーション、FD組織づくりのためのFDなどをケーススタディとして分析した。これらを総合し、理念(相互研修論)、組織(FD組織論)、実践(マクロ : FDプログラム論、ミクロ : 臨床論)のそれぞれを重視し、大学教員初任者の職能発達に向けた環境づくりへのポイントを、以下のような項目別に整理した。 1、FDの考え方(相互研修型FDを組織するということ)2、全学FDセンターの在り方3、個別研修から相互研修に向かうFDプログラム(授業コンサルテーション、集中型FDプログラム(大学院生研修、大学教員初任者研修))4、組織介入から相互研修へ向かうFDプログラム(FD組織作りのためのFD、集中型FDプログラム(FDリーダー層研修)5、FDにおける臨床とは何か これらをもとにして、「日常性・個別性を重視した大学教員初任者教員向けFDプログラム」に関する提言を作成した。これらは、Web化もおこない公開する。
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