研究概要 |
平成19年度は,対話的思考力の獲得過程を明らかにするためのステップとして,(1) 議論プロセスを明らかにするツール群の開発と洗練,(2) 議論の効果性に影響を与える個人の思考力の解明,(3) 数か月間にわたる議論訓練による変化プロセスの検討手法の開発,(4) 議論実践場面における参与観察,を行った。 (1) については,自然言語処理技術を援用して,議論プロセスや議論内容を分析するためのツール群を開発し,雑誌論文に概要を発表した。また,議論で発話量が少ない者でも,発言の重要さを明らかにできる指標として「議論への相対的貢献度」を開発し,国際学会においてポスター発表を行った。 (2) では,大学生・大学院生にペアで議論してもらい,効果的な議論方略を用いることができたペアに特徴的な個人の思考力が何か検討した。その結果,効果的な議論を行った者は,反論された際に効果的に再反論し,自分の考えを説得的に主張できる「反駁スキル」が高いことが示唆された。 (3) では,個人を対象にした議論訓練の方法として,自分の考えに自分で反論する自己反駁法を用い,それを繰り返し行うことで個人内にどのような変化が生じるか検討した。その結果,個人内の2つの立場の間で起こる相互引用が個入内で思考が洗練されていくことの指標になることが示唆された。 (4) では,議論実践のフィールド研究を行った。九州大学キャリア支援センターとドイツ・シュタインバイス大学の合同プログラムとして行われたビジネスプラン作成のプロセスを記録し,目下分析中である。 なお,当初予定していた大学の議論実践コミュニティにおける参与観察は,研究者側の都合で頻繁にフィールドへ足を運ぶことが困難になったため,代替研究として上記項目(3)(4)の研究を行った。
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