研究概要 |
虐待件数の増加や,育児に悩む母親の増加により,子ども虐待や育児ストレスへの関心が高まっている。少子化や核家族化によって,子どもと直接に触れ合う機会が減少し,子どもに関する基本的な知識や接触体験をほとんど持たないまま親になる者が多く,このような知識や体験の不足が,育児を困難にしている要因の一つとして指摘されている。高等家庭科では,親の役割や育児に関する基本的知識,さらには子どもとの実際の触れ合い体験,等の学習内容の充実を図り,将来の子育てに対する予防的な援助を試みつつある。本研究では,親準備性に関連する要因を同定し,親準備性を規定するプロセスモデルを案出することを第1の目的とし,そのモデルに基づき,将来の子育てに向けての教育援助法を検討することを第2の目的とする。 まず,平成19度の科学研究費を用いて,質問紙作成のための資料の収集とその整理,及び大学生および初期成人に対する予備調査(質問紙調査,インタビュー,等)を行った。それらの結果を分析し,本調査の準備(尺度項目の整備)の最中である。予備調査から,子どもに対するイメージは全体的に良好であることが示された。これは,これまでの先行研究の結果と一致するものである。しかしながら,子育てに対する具体的な知識や展望,については不十分であることが見出された。また,成人の対象者においては,将来の子育て環境をネガティブなものとして捉える傾向にあった。今後の目的の一つとしては,この予備調査の結果を関連学会で発表していくとともに,学術論文としてまとめていくことを予定している。
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