研究概要 |
本研究の第1の目的は, 親になるための準備状態(親準備性)の概念を整理し, 親準備性を規定するプロセスモデルを案出することである。第2の目的は, モデルに基づき, 将来の子育てに向けての教育援助法を検討することである。一連の研究により, より効果的な親教育の提案に貢献できるような知見の獲得を目指す。 平成20年度は, 親準備性の意識・態度的側面についての評価尺度について, 前年度に行った予備調査による項目の修正, 追加等を行った上で, 大学生を対象に本調査を実施し, 現在も継続中である。予備調査によって示唆された重要な点として次のようなことが挙げられる。先行研究では, 子どもに対する好意的・否定的な感情, 態度や, 将来の子育てに対する自信や不安といった感情, 態度が親準備性の下位概念として想定され尺度作成の試みが行われてきた。予備調査の結果からは, それらに加え, 子育てによる制約感に関連するような下位概念が見出され, これは上述した感情や態度とは独立したものであることが推測された。また, 親準備性に関連する要因として, これまで挙げられていた, 子どもとの接触経験, 家族関係, 等に加え, 個人がもつ将来展望や性別役割観などと関連していること, その関連の仕方は男女によって異なることが示された。このようなことから, 親準備性の問題を考える上では, 将来のライフコースを含めた視点を持つことが有効であるのではないかと考えられた。現在, 家庭科等における保育教育では親準備性を促すカリキュラムの検討, 実践が進められている。予備調査から得られた知見からすると, 親になることだけに焦点化した内容ではなく将来のライフコースの選択, といった内容を含めた枠組みの中での教育が有効である可能性がうかがえる。また, 性別による違いを考慮した教育内容を検討することも重要であると考えられる。 今後の, 本調査のデータ分析によって, より詳細な検討を行っていく予定である。
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