発達障害成人当事者の研究のこれまでは、主に著書を著している者や幼少期から支援を受けていた者を研究対象としていたが、これに当てはまらない成人後に診断を受けた発達障害当事者の現状に関する聞き取り調査を4名に行った。 アスペルガー症候群の場合の共通点として、小学校入学前からの対人関係における困難さを意識していたということが挙げられた。既に幼稚園などでの集団行動に困難さを持ち、他者と自己の違和を抱いていたことがあげられた。このような対人関係において他者をタイプごとに分類・分析することで、自分の振る舞いの調整を行なっていたという報告があった。 また同じくアスペルガー症候群共通の悩みとして挙げられたのは自己の感情認識に関する問題であった。自身が感じているはずの感情に対し、リアルタイムでラベリングすることが困難であるというものであった。これまでの研究では心の理論を中心に他者の感情認知の問題が多く報告されていたが、他者との関係性の中で自己の感情認知はコミュニケーション活動上、大きな問題を生じさせることが予想され、今後の研究における課題として重要となることが示唆された。 一方、学習障害を持つ当事者では、学童期に漢字が苦手だった困り感が成人後には、顔の識別問題となって現れ、コミュニケーションに大きな問題を示すものではない学習障害の生涯発達支援において新たな課題を示唆するものであった。
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