研究概要 |
本研究は,対人葛藤や謝罪についての幼児および児童の認識が年齢に伴いどのように変化するのかを明らかにし,対人葛藤への介入の在り方を考える上で有用な情報を提供することを臼的としている。平成19年度においては,以下の3つの研究を行った。研究1では,4・5・6歳児を対象として,印象悪化抑制,怒り緩和,許容,罰回避という4つの謝罪効果の認識と親密性との関連を検討した。分析の結果,印象悪化抑制,怒り緩和,許容については親密性の効果が認められ,親密性の高い他者に対して高い謝罪生起カヨ見られるのは,親密性が謝罪効果を高めることに一因があることが示唆された。研究2では,親密な他者として母親,友だちという2つのタイプを設定し,被害者との関係特性と謝罪生起頻度との関連について,4・5・6児を対象に検討した。加害者の行動予測についての回答を4つのカテゴリー(謝罪,告白・補償行動,ネガティブ感情,その他)に分類し,逆正弦変換法を用いた分散分析を行った結果,謝罪を回答した者は4歳児よりも5・6歳児で多かったが,母親/友だちという関係特性と謝罪生起との間に関連はみられず,その理由として,幼児カミ母親と友達の親密度を明確に区別していない可能性と,幼児にとって母親観を構成する主な要因が権威など親密性以外のものである可能性が挙げられた。研究3では,小学校2・4・6年生を対象として児童期における謝罪生起頻度の発達的変化について検討した。明らかに非が認められる状況での加害者の行動予測についての回答を,研究2と同じ4つのカテゴリーに分類して検定した結果,謝罪生起頻度に学年による違いは見られず,その理由として,児童力§謝罪することによって生じ得る様々な義務(Petrucci,2002)を回避するために謝罪そのものを放棄した可能性と,補償行動などの謝罪以外の方略に謝罪よりも高い有効性を見出している可能性が挙げられた。
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